今回は、絶対に勘違いしちゃいけない「医療費控除」のお話です。

今年に入って、なんかダンナも私も病院ばっかり行ってるの~ お医者さんのお金、結構かかっちゃってて…
でも、医療費って年間10万円以上かかったら、それ以上のお金って後で戻ってくるんだよね~?
○○ちゃん、知ってる?

あ、そういうの聞くよね~
じゃあ、夏頃とかにもう10万円とか超えちゃってたら、それ以降使っても戻ってくるんだから、何かあったら気軽に行けば良くない?
…管理人の鈴木が近所のファミレスで遅めのランチをしていたとき、若いママさん二人がこんなお話をしていました。
「医療費控除」についてのお話をしているわけですが…
これはなんとも恐ろしい勘違い!!
…もしかして、みなさんもこのように思ったりしていませんか?
確かに、これまでの人生であまり病気などがなく、ほとんどお医者さんにかかった経験がなかった方などは、考えるきっかけもなかった為、そのように思われていても仕方ない部分もあります。
ですが、いざ必要となったときにここを勘違いしていると、大変な事になってしまいます。
今後の人生で「医療費控除」が必要となったときに損をしないために、しっかりと理解しておきましょう。
◆「医療費控除」は10万円以上のお金が全額戻ってくるわけじゃない!
上記の二人の若いママさんの会話では

医療費は年間10万円以上かかったら、その分後で戻ってくる。
つまり、年間30万円かかったとしたら、後で20万円戻ってくる。
だから10万円を超えた分は、後で還付されるから、いくらでも使い放題!!
と、こう思っている事になります。
確かに、医療費控除ってよく理解できていない段階では、
「年間10万円以上医療費がかかった場合、控除対象になる」という部分だけがぼんやりと頭にあるせいで、こんなふうに思ってしまうのも仕方がない事かもしれません…。
でも、これって、全然違っていて、医療費控除ってそんなに大きなお金が戻ってくるものじゃないんです。
仕組みの要点をお伝えすると、
かかった医療費を年収から差し引く事によって、年収を元に額が決まる「所得税・住民税」の納税額がその分少なくなる
という事なのです。
・医療費控除の計算のイメージ
金額が大きい方がイメージがしやすくなりますので、あえて歯科の「インプラント治療」を例にお話をしてみます。
(※細かい計算式を入れると難しくなるので、あえて省きます。詳細な計算式は後述します)
年収500万円の人がインプラント治療で年間210万円かかったとします。
このうち医療費控除対象の条件「年間10万円以上の部分」となるのは200万円分
↓
医療費控除の結果 年収500万円 – 200万円 = 300万円
↓
では、あなたを年収300万円 の人として納税額を調整して還付しますよ!
というのが、医療費控除の考え方です。
年収500万円ある方は、当然ですが、年収300万円の人よりも、所得税や住民税を多く納めています。
つまり、医療費控除の申告をする事によって、年収500万円の人が、年収300万円として扱われるようになるわけです。

私、実際は年収300万円なのに、年収500万円の人間として税金を納めてます!
これじゃあ私、税金、取られすぎです!!
その差額の200万円分で計上されてる所得税・住民税は返してくださいよね!
というのが「医療費控除」の申告の正体です。
つまり、けっして
10万円を超えたて払った全額が手元に戻ってくる
というわけではありません。
これを勘違いして、後で「戻ってくるから!」という甘い考えで、高額なインプラント治療やワキガ手術などを決めてしまったら大変です。
高額な治療を受けるにあたってここは絶対に勘違いしてはいけないところなので、注意しましょう!
◆医療費控除で押さえておくべきポイント
・生計を一(いつ)にする家族の医療費全てを合算できる
医療費控除は「生計を一(いつ)にする家族」にかかった医療費を全て合算して、控除の申告をする事ができます。
もしあなたの家族の1年間の医療費が
- おじいちゃんが年間20万円
- お父さんが年間10万円
- お母さんが年間10万円
- 娘が年間10万円
かかっていた場合、
家族で合計50万円だとすれば、これを合算しての申告をする事が可能です。
「生計を一(いつ)にする家族」というのは、下記のような状態にある家族も含まれます。
・単身赴任で県外で働いているお父さん
・大学に行って一人暮らしをしている娘
別の場所に住んでいるというだけで対象外にはなりませんので、医療費控除の申告を行う際には、家族みんなに確認をするようにしましょう。
(さすがにペットの病院にかかったお金は含まれないようです)
申告は家族の誰でも行う事ができますが、ここまでお話をしてきたとおり、

医療費控除は「年収の圧縮による節税」という性質のものです。
ですので、同一生計の家族の中で「一番年収の多い人」が申告をするのが、一番節税効果が高くお得という事になります!
つまり「お父さんは正社員、お母さんはパート(その他副業での収入も無し)」という、世にありがちな我が家 鈴木家のような家庭の場合は、お父さんで申告するのが一番お得になります。
・医療費控除の対象となる条件について
医療費控除の対象となる条件の判断は
「治療」は対象になるが「予防」は含まれない
と考えておくとわかりやすいです。
治療は、風邪をひいた、虫歯になったなどの状態を治してもらう事ですので、当然治療として控除の対象となる医療費となります。
これに対し、同じ歯医者さんでも「歯石取り」のような予防にあたるもの、眼科での視力の検査などは「予防」となりますので、控除対象の医療費とはなりません。
・保険外診療(自由診療)でも医療費控除の対象になる
保険(社会保険・国民健康保険)での3割自己負担となり治療でしか、医療費控除の対象にならないと考えている方も多いですが、これはそうではありません。
「病気の治療」に属するものであれば、保険外診療であっても医療費控除の申告の対象になります。
歯の治療のインプラント、眼科の治療のレーシック、ワキガ・多汗症治療等の等の高額な医療サービスも、ちゃんと「病気の治療」であったのであれば、医療費控除の対象となります。
美容のために、歯並びを良くしたいからインプラントをした、ワキガではないけど臭いを完全になくしたいから、ワキガ手術を受けた…などの場合は「美容目的の治療」として扱われる事になり、これは医療費控除の対象になりませんので、注意しましょう。
ちなみの当サイトのメインテーマである「永久脱毛」も美容に属するものとして扱われますので、保険で治療を受けたり、医療費控除として申告する事はできません。
どんなにムダ毛がボーボーなジャングルでも病気として扱ってもらう事は不可能のようです(笑)
・病院にかかったお金は全て領収書を取っておくべし!
お医者さんに関わる事で使ったお金は、どんなものであってもひとまず「領収書を取っておく」という事を徹底しましょう。
家族で「お医者さんの領収書ボックス」のようなものを作っておくのがオススメです。
医療費控除には通院のための「交通費」も対象となりますので、バス・電車・タクシーで使ったお金も計上できます。
バス、電車等のレシートが出ないものは、使った日と料金をまとめたものを残しておけばOK。タクシーはレシート必須、となります。
自家用車で通う際のガソリン代・高速道路料金・駐車料金は計上する事ができません。(たとえ通院にのみ使っている事実があるとしても、事実関係の確認が困難なため)
こう考えると、高額医療の治療を受ける際の病院を選ぶ際、
「近所の不安な医者よりも遠くの名医」
という選択も視野に入れやすくなるかと思います。
「このお金は申告の中に含めても良いのかな…?」と迷うようなものであっても、ひとまずレシートは取っておきましょう。
それについては申告の際に税務署で質問をしてみれば良いです。
・計上する期間は1月1日~12月31日まで
計上する期間は1月1日~12月31日までとなり、翌年度1月1日以降、確定申告が終わった後であれば、いつでも医療費控除の申告を行う事ができます。
ですので、大きな医療費のかかる保険外診療の治療などを行う際には、年末頃に受けるようにして、1月1日に年度が切り替わったらすぐに医療費控除の申告を行うようにすれば、家計のやりくりにも良いと思います。
補足:「所得税」の調整分は還付金として、こちらが指定する銀行口座に振り込まれます。「住民税」は前年度収入をもとに翌年度の納税額が決定されるものですので、還付ではなく「減額(将来払う分が減る)」という事になります。
◆医療費控除についてのお話 まとめ
以上、医療費控除の計算の仕方や注意点などについてお話をしてみました。
これまで医療費控除について正しく理解をできていなかった方には、

「医療費控除って10万円以上かかったお金が全額戻るわけじゃないんだ!」
という事だけでも今回気づいていただけたならよかったです。
医療費控除の詳細な計算や適用条件等については、下記のAll Aboutでの家計簿・家計管理ガイド 山口 京子さんの解説が超わかりやすくて素晴らしいです。
「今後の人生のために、この機会にちゃんと理解しておこう!」というお気持ちになった方は、ぜひチェックしてみてください。
…以上、この想いが、あのときファミレスで隣の席にいた、二人の若いママさんのもとにも届く事を願って(笑)